『大自然』炎の七番勝負もあと4つ。
まさに毎日がヴァーリトゥード。
(意・「殺らなきゃ殺られる世界」澤田先生の言葉より)
この余りに過酷なチャレンジマッチに、
役者陣も単なる疲労という言葉では片付けられない、
奇妙な肉体状態に陥っている楽屋裏です。
二時間の間、ずっと舞台に出ずっぱりで、その間、たった一回しか水を飲むチャンスがないという成清君の目は、今日の時点で、まるで厳しい自然の中にたたずむ飢えた子鹿のような、思考ゼロ、本能のみでただ生きてる、生きていくしかないっていう、か弱い動物のうるんだ瞳のようになっている。
土井役の田端は毎ステージ始まる前に必ず、自然に鼻血を噴出している。
彼女の精神状態はこのカムめくりの今週水曜日の文の中に出てくる「ポエム」というポエムを読めばわかるだろう。というかわからない。悪魔にでもとりつかれているのだろうか?しかもただの悪魔じゃなくて、それは気が触れた悪魔で、逆に悪魔ですらないという・・そして鼻血。もう想像がつかない自然状態にある。
極めつけは清水さんである。
まず本番中にコンタクトが白く曇るという。
コンタクトって曇るのか?
「あるいは何か白濁した液が出てるんだろうね。目から」
とか言ってるが、そんなことってあるのか?
すると成清君が、でも本当に舞台の佳境の頃に清水さんの目が白くなっているという。まるで犬や猫みたいな目だったと本人も子鹿のような目で訴える。
この二人が声そろえて、「暗転で全くバミリが見えない。何か原因があるんじゃないか?」って言うんだが、たぶん二人とも目をやられているんだろう。
その清水さんは始まる前の楽屋で「プー!プー!」と連呼している。
「俺は本当にギリギリまで追い詰められると、プー!っていうのが出てくるんだ。昔交通事故に遭って死にそうになった時に、事故を起こした相手に対して必死でプー!プー!と連呼し続けたんだ。何も伝わらなかったけどね」
その清水さんが、本番直前に一人で叫んでいる。
「ああ!お湯との相性が最悪だ!」
しばらくするとまた、
「またお湯が!」
とか言っている。
熱いお茶を飲みたいのに、なぜか清水さんが飲みたいタイミングでケイタリングのポットのお湯がなくなって沸かし中になるのである。その度に楽屋から結構離れている階上のスタッフコーナーまで階段を上がらなくてはいけなくて、ただでさえ疲労のきわみにあり、本番に少しでもエネルギーを温存しておきたいところなのに、そんなこんなで「またお湯が!なんでだよ」と言いながら、忙しく動き回っている。今日だけで五回も沸かし中に遭遇し、夜なんかは結局階上まで行こうとしたはいいが、もう開演です、ってことで戻されて、もう結果的に飲めてすらなかったりして。
そんな不思議現象まで誘発するほどギリギリの状態にある清水さんは、今日マチソワ終わってげっそりと疲れていたにもかかわらず、飲み会に顔だけ出してすぐ帰るわといっておきながら、いざ来てみると誰よりも延々としゃべり続けていらっしゃいました。
大変な芝居なんです。
まあ気楽なのは今奈良君と僕くらいのものでしょうか。
今奈良君は朝まで飲んで二日酔いの赤ら顔しゃがれ声でやった鳩羽先生がとてもはまってました。
僕はまあ、肉体的には全然負担ないですから本当にそういう面では楽ですが、
さすがに初日の後は朝まで飲んで酔いながら、もう田舎へ帰ろうかという話を延々して今奈良君に止められたりしてました。
そんな初日を経て、二日目、三日目とまさに早回しで進化の過程を見ているように、この作品は急激に化け物になっていってます。
あと四つ。どこまで行くのかこれは。
どこまで行けるのか。